アリゾナ州スコッツデールの広大な砂漠地帯に、毎年2月になると突如として「世界で最もエキサイティングなスタジアム」が出現することをご存知でしょうか。PGAツアーの中で異彩を放つWMフェニックスオープンは、静寂を美徳とするゴルフの常識を覆し、数十万人の大観衆が熱狂するフェスティバルのような大会です。その舞台となるTPCスコッツデールは、単に騒がしいだけでなく、計算し尽くされた戦略性とドラマチックな展開を生むための「仕掛け」が随所に施された名コースとして知られています。
この記事では、2026年大会を迎えるにあたり、世界中のゴルフファンを魅了してやまないこのコースの全貌を、設計意図から名物ホールの攻略法まで徹底的に深掘りします。なぜプロゴルファーたちはこの場所でスーパープレーを連発するのか、そして勝負の分かれ目となる「魔のホール」はどこにあるのか、その秘密を知ることで観戦の興奮は何倍にも膨れ上がるでしょう。
| 項目 | 詳細データ |
|---|---|
| コース名称 | TPCスコッツデール(スタジアムコース) |
| 全長 / パー | 7,261ヤード / Par 71 |
| 設計者 | トム・ワイスコフ & ジェイ・モリッシュ |
| 名物ホール | 16番(Par 3)、15番(Par 5)、17番(Par 4) |
WMフェニックスオープン2026コースの全体像とTPCスコッツデールの特徴
WMフェニックスオープンの舞台となるTPCスコッツデール・スタジアムコースは、PGAツアーの中でも特に「観客に見せること」を意識して作られた現代的なトーナメントコースの先駆けです。砂漠の自然美を活かしつつ、計算されたリスクとリワード(危険と報酬)のバランスが、選手たちに攻撃的なプレーを選択させるよう巧みに設計されており、毎年ビッグスコアが出る一方で、一瞬のミスが命取りになるスリリングな展開を演出しています。ここでは、このコースが持つ基本的なスペックと、プレーヤー心理を揺さぶる設計の妙について詳しく解説していきます。
2026年大会においても、コースコンディションは例年通り完璧に仕上げられることが予想されますが、特にグリーン周りの芝の状態や、天候によるフェアウェイの硬さがスコアメイクの鍵を握るでしょう。設計者であるトム・ワイスコフの手腕が光るこのコースは、単なる飛距離勝負ではなく、勇気ある決断と繊細なタッチの両方が求められる総合力の試金石となっており、世界ランキング上位の選手たちでさえも翻弄される要素が満載です。
スタジアムコースの基本設計と「リスク&リワード」の哲学
TPCスコッツデールの最大の特徴は、トム・ワイスコフとジェイ・モリッシュによって設計された「リスク&リワード(危険と報酬)」という明確なコンセプトにあります。多くのホールで、ハザード(池やバンカー)の近くを攻めれば攻めるほど、次の一打が有利になるルートが用意されており、選手は常に「安全策をとるか、果敢に攻めるか」の選択を迫られることになります。特に後半のインコースには、スコアを伸ばせるチャンスホールと、大叩きのリスクがあるホールが交互に配置されており、最後まで勝負の行方が分からないドラマチックな展開を生み出す要因となっています。
また、コース全体がギャラリースタンドや丘陵に囲まれているため、すり鉢状の地形が観客の視線をフェアウェイ中央に集める「スタジアム効果」を発揮しています。これにより、選手は常に数万人の視線を感じながらプレーすることになり、精神的なプレッシャーは他のトーナメントとは比較にならないほど高まります。この設計思想こそが、TPCスコッツデールを単なるゴルフコースではなく、エンターテインメントの舞台へと昇華させている最大の理由であり、プレーヤーの攻撃性を極限まで引き出すのです。
アリゾナの砂漠気候がもたらす飛距離への影響と対策
スコッツデールは標高約460メートル(1,500フィート)に位置しており、平地のコースと比較してボールが1〜2%ほど遠くへ飛ぶ傾向があります。さらに、砂漠特有の乾燥した空気は空気抵抗を減らすため、選手たちは通常よりも番手を下げたり、キャリーの計算を修正したりといった微調整を強いられます。2026年の大会期間中も、日中の気温上昇に伴ってボールの飛び方が変化するため、キャディとの綿密な距離計算が勝敗を分ける重要なファクターとなることは間違いありません。
加えて、乾燥した地面はラン(ボールが落ちてからの転がり)が多くなるため、ティショットでは想定以上にボールが転がり、フェアウェイ突き抜けやハザードへの到達といったアクシデントを招くことがあります。特に午後は気温が上がり地面がさらに硬くなるため、選手たちは落下地点の硬さや傾斜をこれまで以上にシビアに読む必要があります。飛距離が出ることは有利に働きますが、それをコントロールできなければ、砂漠の荒野やサボテンが待ち受けるネイティブエリアの餌食となってしまうでしょう。
バミューダ芝とオーバーシードによるグリーンの特性
TPCスコッツデールのグリーンは、ベースとなるバミューダ芝の上に、冬場でも緑を保つためのライグラスやポアトリビリス(粗いブルーグラスの一種)をオーバーシードして作られています。この組み合わせにより、グリーンは非常に滑らかで転がりが良い一方で、芝目が強く影響する場合があり、微妙なアンジュレーション(起伏)と相まってパッティングの難易度を高めています。特に午後になって芝が伸びてくると、カップ際での切れ方が予測しづらくなるため、選手たちは神経をすり減らすことになります。
2026年のコース管理技術の進化により、グリーンのスピードはスティンプメーターで12フィートを超える高速設定に仕上げられることが予想されます。硬く締まったグリーンはアイアンショットのスピンコントロールを要求し、ピンポイントでボールを止められなければ、傾斜によってグリーン外まで転がり落ちてしまうことも珍しくありません。選手たちは、アプローチショットにおいて「どこに落とすか」だけでなく「どのくらいの高さとスピン量で止めるか」という、三次元的な弾道イメージを持つことが不可欠です。
過去の優勝スコアから読み解く攻撃的ゴルフの必要性
この大会の過去のデータを見ると、優勝スコアは通算15アンダーから20アンダー近くまで伸びることが多く、非常にハイレベルなバーディ合戦が繰り広げられる傾向にあります。これは、広めのフェアウェイと比較的素直なグリーンの形状が、プロゴルファーたちに攻撃的なプレーを許容しているためですが、裏を返せば「守りに入った瞬間、優勝争いから脱落する」という過酷なサバイバルレースであることを意味します。2026年も同様に、初日から積極的にバーディを積み重ねていく姿勢が求められるでしょう。
しかし、スコアが出やすいといっても、それはミスをしない完璧なショットを続けた場合の話であり、ひとたびリズムを崩せば連続ボギーを叩く危険性も秘めています。特に優勝争いをするトッププレーヤーたちは、パー5での確実なバーディ奪取はもちろんのこと、難易度の高いパー4でいかにパーを拾い、チャンスホールで爆発力を見せるかという「スコアの波」を作ることに長けています。単に攻めるだけでなく、攻めるべき時と守るべき時を見極めるコースマネジメントの差が、最終的なスコアの差となって表れるのです。
観客動員数70万人が生み出す異次元のプレッシャー
WMフェニックスオープンは、一週間で70万人以上という桁違いの観客動員数を誇り、これは他のメジャースポーツイベントを含めても世界最大級の規模です。コース全体が巨大な野外フェス会場のような雰囲気に包まれ、静寂の中で行われる通常のゴルフとは全く異なる環境下でプレーしなければなりません。選手がアドレスに入っても音楽や話し声が聞こえてくることは日常茶飯事であり、これに対する耐性(集中力を切らさないメンタル)がなければ、TPCスコッツデールを攻略することは不可能です。
特に、地元アリゾナ州立大学出身の選手や、ファンサービスの良い人気選手に対する声援は凄まじく、逆にプレーが遅い選手やマナーの悪い選手には容赦ないブーイングが浴びせられます。2026年大会でも、この大観衆を味方につけ、そのエネルギーを自身のパフォーマンスに変えられる選手こそが、優勝トロフィーに近づくことができるでしょう。観客との一体感を楽しむ余裕があるか、それとも騒音に苛立ちを見せるか、その精神状態の違いがショットの精度に如実に現れるのがこの大会の醍醐味です。
世界一騒がしい名物ホール!16番パー3の魔力と真実

TPCスコッツデールを語る上で欠かせないのが、世界で唯一無二の存在である16番パー3、通称「ザ・コロシアム」です。わずか160ヤード前後の短いホールですが、ティグラウンドからグリーンまでを360度取り囲む巨大なギャラリースタンドには、2万人以上の観客が詰めかけ、その光景はゴルフ場というよりサッカースタジアムそのものです。ここでは、選手たちが最も恐れ、そして最も興奮するこのホールの真実と、2026年に期待されるドラマについて詳しく見ていきましょう。
このホールでは、通常のゴルフマナーは一切通用せず、ナイスショットには地鳴りのような歓声が、ミスショットには容赦ないブーイングが飛び交います。選手たちはこの独特の雰囲気を事前にシミュレーションして臨みますが、実際の「音の壁」と「視線の圧力」は想像を絶するものであり、百戦錬磨のベテランでさえも手が震えると言われています。16番ホールを無傷で切り抜けることは、この大会を制するための通過儀礼のようなものであり、ここで生まれた勢いがその後のホールにも大きく影響します。
コロシアムと呼ばれる3階建てスタンドの構造と雰囲気
16番ホールのスタンドは、大会の数ヶ月前から建設が始まり、鉄骨で組まれた3階建ての巨大な建造物として完成します。四方を完全に囲まれているため、風が遮られて読みづらくなるだけでなく、数万人の呼気と熱気によって微妙な上昇気流が発生するとも言われており、単純な距離計算では測れない難しさがあります。観客席との距離が非常に近く、選手はアリーナに入場する剣闘士のような気分でティエリアへと向かい、そこでの一挙手一投足が巨大スクリーンに映し出されます。
スタンド内の雰囲気は、朝からアルコールを楽しむ観客たちによってヒートアップしており、応援歌やチャント、時には選手への野次までが入り乱れるカオスな空間です。しかし、この狂乱こそがWMフェニックスオープンのアイデンティティであり、選手がバーディを奪った瞬間に空から降り注ぐビールカップの雨(現在は安全のため制限されていますが)や、爆発的な歓喜のエネルギーは、ゴルフというスポーツの枠を超えたエンターテインメント体験を提供しています。
プロでも震える?ホールインワンの確率と歴史
16番ホールは距離が短く、グリーンの形状も比較的受け入れているため、プロにとっては本来「簡単な」パー3であるはずです。しかし、過去のデータを見ると意外なほど多くの選手がミスを犯しており、その原因のほとんどは精神的なプレッシャーによるものです。一方で、タイガー・ウッズやフランチェスコ・モリナリなどが達成したホールインワンは大会の伝説として語り継がれており、2026年大会でも「エース」が出れば、その映像は世界中を駆け巡る歴史的瞬間となるでしょう。
ホールインワンの確率は低いものの、ピンそばに絡むショットが出れば、観客のボルテージは最高潮に達し、その選手は英雄として称えられます。逆に、グリーンを外してバンカーやラフに入れてしまうと、数万人からの一斉ブーイングという屈辱的な洗礼を受けることになります。この「天国と地獄」のコントラストが明確であることが、16番ホールを世界で最もスリリングなパー3にしている理由であり、選手たちはリスクを承知でピンをデッドに狙う勇気を試されるのです。
ファンとの一体感を生むための観戦マナーと楽しみ方
もし現地で、あるいはテレビ中継で16番ホールを観戦する場合、このホール特有の「お祭り」に参加する意識を持つことが重要です。静かに見守るのが美徳とされる他のホールとは異なり、ここでは選手が良いショットをした際には全力で称え、盛り上げることがマナーとさえ言えます。選手側もそれを理解しており、キャップやボールをスタンドに投げ入れたり、観客を煽るジェスチャーを見せたりと、インタラクティブなコミュニケーションが行われるのが常です。
2026年の観戦において注目すべきは、若手選手たちがどのようなパフォーマンスで観客の心を掴むかという点です。近年では、自身の愛称が書かれたグッズを配布したり、地元のスポーツチームのジャージを着て登場したりする選手も増えており、ゴルフの実力だけでなく「ショーマンシップ」も評価の対象となります。16番ホールは、選手とファンが一緒になって作り上げるライブステージであり、その一員として熱狂に身を委ねることが、この大会を最大限に楽しむ秘訣と言えるでしょう。
勝負を決する上がりホール!15番から18番のドラマ性
WMフェニックスオープンの優勝争いがもつれる最大の要因は、TPCスコッツデールの上がり4ホール(15番、16番、17番、18番)が持つ極めて高いドラマ性にあります。これらのホールは、スコアを伸ばせるチャンスと致命的なミスを誘発するリスクが背中合わせになっており、数打差のリードがあっても一瞬で逆転が可能という設計になっています。ここでは、16番を除く残りの3つの勝負所の特徴と、選手たちが直面する戦略的課題について解説します。
特にサンデーバックナイン(最終日の後半9ホール)では、これらのホールでどれだけアグレッシブに攻められるかが勝敗を分けます。守りに入ってパーを重ねるだけでは、後続の選手にビッグスコアを出されて追いつかれる可能性が高く、優勝するためにはリスクを冒してでもバーディやイーグルを狙いにいかなければなりません。2026年大会のクライマックスでも、池とバンカーが巧みに配置されたこれらのホールで、数々のスーパーショットと悲劇が生まれることは確実です。
15番パー5はツーオン狙いのアイランドグリーン
15番ホールは、約550ヤードのパー5で、多くの選手にとって2オンが十分に可能な「イーグルチャンス」のあるホールです。しかし、グリーンは周囲を水に囲まれたアイランド形状となっており、セカンドショットの精度が少しでも狂えばボールは水中に消え、イーグルどころかボギーやダブルボギーになるリスクがあります。ティショットをフェアウェイの平らな場所に置けるかどうかが鍵となり、そこからのセカンドショットは、池越えのプレッシャーに打ち勝つ精神力が試されます。
過去には、このホールでのイーグルがきっかけで優勝を勝ち取った選手もいれば、池に捕まって優勝争いから脱落した選手も数え切れません。特に最終日はピン位置が厳しい場所に切られることが多く、選手は「刻んで3打目勝負にするか」「池のリスクを負って2オンを狙うか」の究極の決断を迫られます。リーダーボードの状況を確認しながら、自身の順位と残りホール数を天秤にかけたギリギリの判断が見どころとなります。
17番パー4はワンオン可能だが池の罠が待つ
17番ホールは、約330ヤードという短いパー4で、多くの選手がドライバーでワンオンを狙うことができる名物ホールの一つです。しかし、グリーンの左サイドから奥にかけては池が食い込んでおり、右サイドには深いバンカーが待ち受けているため、わずかなミスが大きな代償を伴います。ワンオンに成功すればイーグルの可能性もありますが、力んで左に引っ掛ければ即座に池ポチャとなり、優勝への望みが絶たれる危険な賭けとなります。
このホールの面白さは、選手によって戦略が真っ二つに分かれる点にあります。あくまでドライバーで攻め続ける「パワーヒッター」と、アイアンで刻んで確実にバーディを狙う「テクニシャン」の対比は、ゴルフの奥深さを象徴しています。2026年大会でも、優勝を争う緊迫した場面で、誰がドライバーを握り、誰がアイアンを選択するのか、そのクラブ選択自体が大きな見どころとなるでしょう。
18番パー4は池越えのティーショットが鍵を握る
フィナーレを飾る18番ホールは、約440ヤードのパー4で、左サイド全体に広がる大きな池がティショットのプレッシャーとなる難関ホールです。右サイドには木々やバンカーがあり、フェアウェイをキープするためには、池の縁ギリギリを攻める勇気と正確なコントロールが求められます。ティショットさえ成功すれば、セカンドショットは比較的狙いやすい距離になりますが、最後の優勝争いの緊張感の中で、水面の恐怖に打ち勝つのは容易ではありません。
このホールは、過去にプレーオフが行われた際にも数々のドラマを生んできました。安全に右へ逃げすぎるとセカンドショットの距離が残り、バーディを取るのが難しくなるため、最後まで攻め抜く姿勢が必要です。2026年の最終日、夕陽に染まる18番ホールのグリーン上で、ウィニングパットを決めるのは誰なのか。その瞬間まで片時も目が離せない、最高の舞台装置がここに整っています。
選手を苦しめる砂漠特有のハザードとコースマネジメント

TPCスコッツデールが見た目の美しさとは裏腹に難コースとされる理由の一つに、アリゾナの砂漠地帯特有の「自然のハザード」があります。日本のゴルフ場のようなOB杭や整えられたラフとは異なり、フェアウェイを一歩外れればそこは荒涼とした砂地や岩場であり、脱出困難なトラブルが待ち受けています。ここでは、選手たちが警戒すべき砂漠ならではの罠と、それに対応するためのマネジメント術について解説します。
2026年の大会においても、これらのハザードはいわゆる「アンラッキー」ではなく、設計者が意図した戦略的な障壁として機能します。選手たちは、単にボールを遠くへ飛ばすだけでなく、これらの危険地帯を巧みに避け、安全なエリアにボールを運び続ける「我慢強さ」と「空間認識能力」が必要となります。砂漠のゴルフは、自然との戦いであり、その厳しさを知ることが観戦の深みを増すことにつながります。
ウェイストエリアとバンカーの境界線とルール
このコースには、整備された白い砂の「バンカー」と、自然のままの土や砂利が広がる「ウェイストエリア(ネイティブエリア)」が混在しており、これらを正確に見分けることが重要です。ウェイストエリアでは、クラブを地面につけてソールしたり、素振りをしたりすることが認められていますが、バンカーではそれらがペナルティの対象となります。見た目が似ている場所も多く、選手やキャディはルールオフィシャルに確認をとるなど慎重な対応が求められます。
ウェイストエリアからのショットは、足場が悪かったり、ボールのライが極端に悪かったりすることが多く、クリーンにボールを捉える技術が試されます。また、小石や木の根が隠れていることもあり、クラブを破損するリスクや、思わぬ方向にボールが飛んでいく可能性も考慮しなければなりません。フェアウェイキープ率が重要視されるのは、こうした予測不能なエリアに打ち込まないためであり、ティショットの精度がスコアに直結する理由でもあります。
自生するサボテンやブッシュへの打ち込みリスク
コース外周やホールの境目には、チョーヤ・カクタス(飛びつきサボテン)や巨大なサワロサボテンなど、アリゾナを象徴する植物が自生しています。これらの植物の近くにボールが止まった場合、鋭い棘による怪我のリスクがあるため、無理に打つことはできず、アンプレヤブル宣言(1打罰でドロップ)を余儀なくされるケースが多々あります。日本の林間コースであれば隙間から狙えるような状況でも、砂漠の植物は密集して生えており、脱出ルートを完全に塞いでしまうのです。
特に「ジャンピング・カクタス」と呼ばれるサボテンは、少し触れただけで節が外れて体に付着するため、ボールを探す際にも細心の注意が必要です。プロゴルファーであっても、自然の脅威には勝てません。2026年の大会中も、一見何でもないような曲げたボールが、サボテンの群生に入ってしまい、スコアを大きく崩すシーンが見られるかもしれません。これは、砂漠コースならではの「見えないハザード」としての恐怖を選手に与え続けています。
午後の強風が計算を狂わせる時間帯の攻防
砂漠気候の特徴として、午前中は穏やかでも、午後になると急激に風が強くなる傾向があります。遮るものが少ないオープンなコース形状のため、風の影響をダイレクトに受けやすく、特に午後スタートの選手たちは厳しいコンディションでのプレーを強いられます。向かい風(アゲインスト)では飛距離が落ちるだけでなく、乾燥した空気と相まってボールが浮き上がりやすくなるため、低い弾道(スティンガーショット)を打つ技術が求められます。
2026年大会の予選ラウンドでは、午前スタートと午後スタートの組み合わせによる有利不利(ドローバイアス)が発生する可能性があります。午後組になった選手は、硬くなったグリーンと強風という二重苦に耐えながら、いかにスコアを落とさずに耐えるかが予選通過の鍵となります。風向きがホールの難易度を劇的に変えてしまうため、リーダーボードを見る際は、その選手がどの時間帯にプレーしているかを考慮すると、より深く戦況を理解できるでしょう。
現地観戦でコースを最大限に楽しむためのポイント
もし幸運にも2026年のWMフェニックスオープンを現地で観戦する機会があるなら、広大なTPCスコッツデールを効率よく回り、その熱気を肌で感じるための準備が必要です。70万人規模の観客が押し寄せるため、無計画に歩き回ると人混みに疲れてしまい、肝心のプレーを見逃してしまうことになりかねません。ここでは、現地のベテランファンが実践している、コースを120%楽しむための観戦のコツを紹介します。
テレビ中継では映らないアングルや、選手たちの息遣い、そして砂漠の美しい夕景など、現地でしか味わえない感動がそこにはあります。ゴルフ観戦というよりは「巨大なパーティーに参加する」という感覚に近いこの大会において、どこで何を見るべきかを知っておくことは、チケット代以上の価値ある体験を得るためのパスポートとなるはずです。
ギャラリースタンド以外の穴場観戦スポット
有名な16番ホールのスタンド席はチケット入手が困難ですが、コース内には他にも迫力あるプレーを間近で見られる穴場スポットが存在します。おすすめは、多くの選手がドライバーを握る10番ホールのティグラウンド周辺や、2オンを狙うショットが見られる15番ホールのグリーン横の丘(通称:ザ・ヒル)です。これらの場所は比較的スペースに余裕があり、ピクニック気分で芝生に座りながら観戦を楽しむことができます。
また、練習場(ドライビングレンジ)も必見のスポットです。スタート前の選手たちが、どのようなルーティンでウォーミングアップを行っているか、コーチとどのような会話をしているかを至近距離で観察できます。世界トップレベルの選手たちの打球音や弾道の高さを目の当たりにできるのは練習場ならではの特権であり、ゴルフファンにとってはたまらない時間となるでしょう。
広大なコースを効率よく回るための移動ルート
TPCスコッツデールは広大で、観客用の通路も複雑に入り組んでいます。効率よく回るためには、主要なホール(9番、18番、16番など)を結ぶ動線を事前に把握し、混雑するボトルネック箇所を避けることが重要です。特にトーナメント終了直後の18番周辺や、人気選手の組が通過する際のクロスウォーク(横断歩道)は激しく混雑するため、早めの移動を心がけるか、あえて一組前の空いている組についていくのが賢明です。
2026年大会では、スマートフォンの公式アプリを活用して、選手の現在位置や混雑状況をリアルタイムで確認することをおすすめします。また、コース内には多くのフードコートやバーが設置されていますが、昼時は長蛇の列ができるため、少し時間をずらして利用するか、比較的空いている前半ホール側のエリアを利用するとスムーズです。体力消耗を抑えつつ、見たいシーンを逃さない「観戦マネジメント」もまた、この大会を楽しむための重要なスキルです。
砂漠の気候に適した服装と必須アイテムの準備
アリゾナの2月は、日中は25度近くまで上がり半袖で過ごせる陽気になりますが、朝晩や日が陰ると急激に冷え込み、10度以下になることも珍しくありません。そのため、着脱しやすいレイヤードスタイル(重ね着)での服装が必須です。薄手のダウンジャケットやウィンドブレーカーをリュックに入れておき、気温の変化に合わせて体温調節ができるようにしておきましょう。
また、砂漠の日差しは強烈なため、サングラス、帽子、日焼け止めは季節を問わず必需品です。乾燥対策としてリップクリームや目薬、そして十分な水分補給も忘れてはいけません。足元は、広大なコースを歩き回るために履き慣れたスニーカーやウォーキングシューズがベストです。ゴルフシューズを履いてくるファンもいますが、コンクリートの通路を歩くことも多いため、クッション性の高い靴の方が疲れにくいでしょう。
まとめ:WMフェニックスオープン2026コース攻略の鍵
WMフェニックスオープン2026の舞台となるTPCスコッツデールは、世界で最も熱狂的なギャラリーと、計算され尽くした戦略的コース設計が見事に融合した、唯一無二のトーナメント会場です。選手たちは、スタジアムコース特有の「リスク&リワード」に挑み、16番ホールでの轟音のようなプレッシャーに耐え、そして上がり3ホールのドラマチックな展開を制さなければなりません。砂漠の気候やハザードも相まって、技術だけでなく精神力の強さが試される、真の王者決定戦となるでしょう。
観戦する私たちにとっては、単にスコアを追うだけでなく、各ホールに隠された設計者の意図や、選手が直面している極限の心理状態を想像することで、その興奮は何倍にも深まります。2026年の大会では、誰がこの熱狂のコロシアムを制し、砂漠の王座に就くのか。ぜひこの記事で紹介したポイントを参考に、世界最高峰のエンターテインメント・ゴルフを心ゆくまで楽しんでください。次は、実際の放送スケジュールや出場選手情報をチェックして、観戦計画を立ててみてはいかがでしょうか。


